ビッグバン後、宇宙はこうして冷えていった ~元素や星が生まれるまで~
はじめに:ビッグバン直後の宇宙は、想像もできないほど熱かった
ビッグバン理論では、私たちの宇宙はおよそ138億年前に、ごく小さく、そして非常に熱い状態から始まったと考えられています。
まさに宇宙が生まれたばかりの頃は、今からは考えられないほど熱く、光すら自由に飛び回れない、まさに灼熱の世界でした。まるで巨大な炎の中にいるような状態だったと言えるでしょう。
では、この熱い宇宙は、どのようにして今の姿になったのでしょうか? その鍵となるのが、「宇宙が冷えていった」という出来事なのです。
宇宙が広がると温度が下がる不思議
ビッグバンが起きた後、宇宙はものすごい勢いで広がり始めました。そして、この「宇宙の広がり」こそが、宇宙全体の温度を下げることにつながったのです。
考えてみてください。例えば、温かいお茶を広い部屋に置いておくと、時間が経つにつれて冷めていきますね。これは、お茶の熱が周りの空気に移り、分散されるからです。
宇宙の場合も、これと似たようなことが起こりました。宇宙という「空間そのもの」が膨らむことで、宇宙全体に存在していた熱や物質が薄まり、広がっていきました。例えるなら、狭い部屋に閉じ込められていた熱気が、急に広い空間に解放されて冷めるようなイメージでしょうか。
このように、宇宙は膨張するにつれて、どんどん温度を下げていったのです。
温度が下がると、宇宙に「もの」が生まれてきた
宇宙の温度が下がることは、宇宙の姿を大きく変える重要な出来事でした。温度が高いときは、あらゆるものがバラバラな状態でしたが、温度が下がるにつれて、少しずつ「もの」が形作られていったのです。
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超高温の時代: ビッグバン直後のごく短い時間、宇宙は非常に高い温度でした。この頃は、物質を作るための小さな粒(専門的には「素粒子」などと呼ばれます)が、激しく飛び回っている状態でした。まるで、すべてが溶け合った、区別のつかないスープのようなものです。
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少し冷えて: 宇宙が少し冷えてくると、小さな粒が集まって、もう少し大きな粒、「陽子」や「中性子」といったものができるようになりました。これらは、今私たちの体や身の回りのものを作っている「原子」の中心にある、「原子核」の材料となるものです。
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もっと冷えて(宇宙の晴れ上がりへ): さらに宇宙が冷えてくると、陽子や中性子などが集まって、「ヘリウム」といった軽い種類の「原子核」が作られました。そして、宇宙が生まれてからおよそ38万年ほど経ち、さらに温度が下がったとき、ついにこれらの原子核と電子(原子の周りを回る小さな粒)が結びつき、「原子」が誕生しました。主に水素原子とヘリウム原子です。
この「原子」ができた瞬間、宇宙を飛び回っていた光が、物質に邪魔されることなくまっすぐに進めるようになりました。これを「宇宙の晴れ上がり(うちゅうのはれあがり)」と呼びます。この時に放たれた光は、「宇宙マイクロ波背景放射(うちゅうマイクロははいけいほうしゃ)」と呼ばれ、現在も宇宙のあらゆる方向から届いており、ビッグバン理論の有力な証拠の一つとされています。
こうして生まれたものが、星や銀河の材料に
宇宙が冷えて水素やヘリウムの原子が生まれた後、これらの原子が集まり、やがて最初の星や銀河が生まれていきました。つまり、ビッグバン後の宇宙が温度を下げていった過程で生まれた軽い元素たちが、今の宇宙のあらゆるものを作る「もと」になったのです。
まとめ:冷えていった宇宙が、現在の姿を作った第一歩
ビッグバン後の宇宙は、膨張によって温度を下げていきました。そして、この温度の変化に合わせて、宇宙の中に存在する物質が形を変え、素粒子から陽子や中性子、原子核、そして原子が作られていったのです。
特に、水素とヘリウムといった最も基本的な原子が生まれたことは、その後の宇宙で星や銀河が誕生するための準備が整ったことを意味します。
このように、宇宙が冷えていくという出来事は、私たちが今見ている星や銀河、そして私たち自身が存在するための、非常に大切な第一歩だったと言えるでしょう。