ビッグバンって本当に大爆発? ~宇宙の始まりのイメージ~
はじめに:ビッグバンと聞いて何を想像しますか?
宇宙の始まりについて「ビッグバン理論」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。この「ビッグバン」という言葉から、多くの方が「何かがものすごい勢いでドカンと爆発した」というイメージを抱かれるのではないでしょうか。
私たち人間は、何か激しい出来事を表現するときに「爆発」という言葉をよく使いますね。しかし、宇宙の始まりで語られる「ビッグバン」は、私たちが普段イメージするような物理的な爆発とは少し様子が違うのです。
このお話では、ビッグバン理論が説明しようとしている宇宙の始まりが、私たちの抱く「爆発」のイメージとどう違うのかを、やさしく解説していきます。
私たちがイメージする「爆発」とは
まず、私たちが「爆発」と聞いて思い浮かべるのは、どんなことでしょうか?
例えば、花火が打ち上がって、ある一点から光や音が四方八方に広がっていく様子。あるいは、火山が噴火して、火口から岩石や煙が飛び散る様子。これらは、何かを中心にして、そこから物質が外に向かって勢いよく飛んでいくイメージですね。
つまり、私たちが普段考える「爆発」は、ある場所から、その周りの空間に向かって何かが広がっていく、という出来事だと言えるでしょう。
ビッグバン理論が説明する「膨張」とは
一方、ビッグバン理論が描く宇宙の始まりは、このようなイメージとは少し異なります。
ビッグバン理論が説明するのは、宇宙が始まった頃は、今の宇宙に存在するすべてのものが、非常に小さく、信じられないほど熱く、そしてぎっしりと詰まった状態だった、ということです。そして、その状態から、宇宙そのもの、つまり空間そのものが急激に、そして大きく広がり始めた、という考え方なのです。
これは、「ある一点から物質が飛び散った」というよりも、宇宙全体が均等に、あちこちで同時に膨らんでいった、というイメージに近いかもしれません。
身近なもので例えてみましょう
少し分かりにくいかもしれませんので、身近なもので例えてみますね。
例えば、風船を思い浮かべてください。しぼんだ風船の表面に、点をいくつか描いてみましょう。この点が、遠くの銀河のようなものだと想像してください。
そして、この風船に空気を入れて膨らませていきます。風船が大きくなるにつれて、表面に描いた点と点の間の距離は、どんどん離れていきますね。
このとき、点は風船の中心から外に向かって飛んでいったわけではありません。点の位置は風船の表面上で変わりませんが、風船の表面という空間そのものが広がったために、点同士の距離が遠くなったのです。
ビッグバン理論が説明する宇宙の始まりの「膨張」は、この風船の表面が膨らむ様子に少し似ています。宇宙に中心があるというよりは、宇宙全体の空間が、まるで風船が膨らむように、あちこちで一斉に大きくなっていった、とイメージしてみてください。
ビッグバン理論は「大爆発」ではない?
「ビッグバン」という言葉は、最初にこの考え方を提唱した科学者が名付けたものではなく、皮肉を込めて他の科学者が使った言葉が広まったと言われています。確かに、強い勢いで何かが始まる様子を表す言葉としては印象的ですが、私たちの抱く「一点での爆発」というイメージとはずれがあることも事実です。
より正確に言えば、ビッグバン理論は、宇宙が過去のある非常に高温・高密度の状態から始まり、それ以来ずっと膨張を続けている、という宇宙の歴史に関する理論なのです。
まとめ:ビッグバンは宇宙全体の始まりと広がりの物語
今日の話を通して、ビッグバン理論でいう「ビッグバン」は、私たちが普段イメージするような「ある場所から何か物質がドカンと飛び散る大爆発」とは少し違う、ということがお分かりいただけたでしょうか。
ビッグバン理論が描くのは、宇宙全体という空間そのものが、最初は非常に小さく熱い状態から、やがて急激に、そして現在に至るまで、ずっと膨張を続けている、という壮大な宇宙の歴史の物語なのです。
宇宙の始まりについて考えるとき、この「膨張」というイメージを持つことが、ビッグバン理論を理解するための一歩となります。