ビッグバン理論は、宇宙のどんな「手掛かり」から分かったの? ~3つの大きな証拠~
はじめに:宇宙の始まりのお話、どこまで本当?
私たちの暮らす広大な宇宙は、今からおよそ138億年前に「ビッグバン」と呼ばれる出来事から始まったと考えられています。これは、宇宙が非常に小さく熱い状態から急激に膨張して、現在の姿になった、という壮大なお話です。
しかし、「宇宙の始まり」という、想像もつかないほど昔の出来事が、なぜ科学的に語られているのでしょうか?まるで遠い物語のように聞こえるこの話が、なぜ有力な理論として多くの科学者に受け入れられているのでしょうか。
それは、ビッグバン理論が単なる推測ではなく、実際に私たちが観測できる「宇宙からの手掛かり(証拠)」にしっかりと裏付けられているからです。今回は、ビッグバン理論がどのようにして確からしいと考えられているのか、特に重要な3つの「手掛かり」を一緒に見ていきましょう。
手掛かりその1:宇宙は今も広がり続けている
宇宙には、たくさんの銀河が点在しています。遠くにある銀河ほど、私たちから速いスピードで遠ざかっていることが観測によって分かっています。これは、宇宙全体がまるで風船のように膨らんでいて、銀河という「点」がその表面で互いに遠ざかっている様子に似ています。
もし宇宙がこのように膨張しているのだとしたら、時間を巻き戻していくと、宇宙はどんどん小さくなり、最後には一点に集まるような非常に密度の高い状態だったはずです。この「宇宙の膨張」という観測結果は、ビッグバン理論が語る「宇宙はかつて非常に小さく熱い状態だった」という考えと自然につながる、大きな手掛かりの一つです。
手掛かりその2:宇宙の「残り火」が見つかった
ビッグバン理論では、宇宙の始まりは非常に高温で光り輝いていたと考えます。例えるなら、宇宙全体が巨大な火の玉のような状態だったイメージです。この熱い光は、宇宙が膨張して冷えていくにつれて弱まっていきましたが、完全になくなったわけではありません。
科学者たちは、宇宙のあらゆる方向から、非常に弱いながらも観測できる「光」がやってきていることを発見しました。これは「宇宙マイクロ波背景放射(うちゅうマイクロははいけいほうしゃ)」と呼ばれ、「ビッグバンの“残り火”」とも言われています。
この残り火が、宇宙のどこを見てもほぼ同じ強さで見つかることは、昔の宇宙が非常に均一な熱い状態だったというビッグバン理論の予測と大変よく合っています。これは、ビッグバン理論が描く宇宙の姿を裏付ける、決定的な手掛かりとなりました。
手掛かりその3:宇宙にある元素の割合
私たちの身の回りの物質は、様々な種類の「元素」でできています。水素やヘリウム、酸素、鉄などです。ビッグバン理論によると、宇宙が生まれてごく初期の、ほんの数分間だけ、宇宙全体が非常に高温で密度の高い状態だったため、軽い元素である水素やヘリウムがたくさん作られたと考えられています。
計算によると、ビッグバン直後に作られた水素とヘリウムの割合は、現在の宇宙全体に存在するこれらの元素の割合と非常によく一致することが分かっています。もしビッグバンが起こっていなかったとしたら、現在の宇宙で観測されるこれらの軽い元素の量は説明が難しいのです。
このように、宇宙に存在する元素の「配合」もまた、ビッグバン理論を支持する重要な手掛かりとなっています。
まとめ:これらの手掛かりが教えてくれること
今回見てきた「宇宙の膨張」、「宇宙の残り火(宇宙マイクロ波背景放射)」、そして「宇宙の軽い元素の量」という3つの手掛かりは、それぞれ独立した観測によって得られた事実です。
そして驚くべきことに、これらの異なる観測結果が、どれも「宇宙はかつて小さく熱い状態から始まり、膨張してきた」というビッグバン理論の予測と見事に一致するのです。
だからこそ、ビッグバン理論は、単なる想像話ではなく、私たちが観測できる宇宙からの確かな「手掛かり」に基づいた、最も有力な宇宙の始まりの物語として、広く受け入れられているのです。宇宙は、私たちに自らの歴史を語りかけるたくさんのメッセージを残してくれているのですね。