ゼロからわかるビッグバン

ビッグバン理論の予測は当たっていた? ~宇宙からの思わぬ「証拠」の話~

Tags: ビッグバン理論, 宇宙の始まり, 宇宙の証拠, 宇宙マイクロ波背景放射, 元素

はじめに

このウェブサイトでは、ビッグバン理論について、専門的な知識がない方にも分かりやすくお伝えすることを目指しています。

ビッグバン理論は、今からおよそ138億年前に、私たちの宇宙全体が非常に小さく、熱い状態から急激に膨張して始まった、という考え方です。

では、このビッグバン理論は、どのようにして多くの科学者に信じられるようになったのでしょうか。それは、この理論が「こうなっているはずだ」と予測したことが、その後の観測によって「本当にその通りだった!」と確認されたからなのです。

今回は、ビッグバン理論の大きな支えとなった、宇宙に残されたいくつかの「証拠」について、お話ししたいと思います。

ビッグバン理論が「こんなものがあるはずだ」と予測したこと

もし、宇宙が本当にビッグバンで始まったのなら、宇宙にはいくつかの「痕跡」が残っているはずだと、理論を考える人たちは予測しました。

その中でも特に重要な予測が二つあります。

一つは、「宇宙の最初の光」のようなものが、今も宇宙のどこかに残っているだろう、という予測です。ビッグバン直後の宇宙はとても熱く、光があちこちを飛び回れないほど密集していました。しかし、宇宙が膨らんで冷えていくと、光が自由にまっすぐ進めるようになった「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる時代が訪れます。この時の光が、宇宙が膨張した結果、波長が長くなり、今も宇宙全体から届いているはずだと予測されたのです。これはまるで、ビッグバンの「残り火」のようなものです。

もう一つは、宇宙で一番最初に作られた軽い元素(水素やヘリウムなど)の量が、決まった比率になっているはずだ、という予測です。ビッグバン直後の熱い宇宙では、これらの軽い元素が作られる「元素合成」が起こったと考えられます。この時にできる元素の比率が、理論によって計算できたのです。

宇宙の「残り火」が見つかった!

さて、理論家たちが「宇宙の最初の光が残っているはずだ」と予測していた頃、全く別の場所で思わぬ発見がありました。

今から60年ほど前のことです。アメリカの科学者たちが、通信衛星用のアンテナで宇宙からの電波を調べていたとき、どうしても消せない「雑音」のような電波が、宇宙のあらゆる方向から同じようにやってくることに気づきました。

これは一体何だろう?と彼らは頭を悩ませました。アンテナに鳥の糞がついているのでは?と掃除をしても消えません。他の場所にある別のアンテナで調べても、やはり同じ雑音が聞こえるのです。

この「雑音」こそが、ビッグバン理論が予測していた「宇宙の最初の光」、今では宇宙マイクロ波背景放射(うちゅうマイクロははいけいほうしゃ)と呼ばれる光だったのです。

宇宙のあらゆる方向から、まるで宇宙全体が過去の熱い時代の名残を帯びているかのように、この光が届いていることが分かりました。これは、宇宙全体がかつて一つの小さく熱い塊だった、というビッグバン理論の考え方を強く支持する証拠となりました。

宇宙の元素の量も予測通りだった

もう一つの予測である、宇宙にある軽い元素(水素やヘリウム)の量についても、観測が進むにつれて、ビッグバン理論の予測と非常によく合っていることが分かってきました。

遠くの宇宙にある星やガス雲を観測すると、そこに含まれる水素とヘリウムの比率は、ビッグバン直後の元素合成で決まったと考えられる比率と、ほとんど同じだったのです。

もしビッグバンが起きていなかったら、宇宙にある元素の比率は全く違うものになっていたはずです。宇宙にある元素の「成分表」が、ビッグバン理論の「レシピ」と一致したことも、理論の正しさを裏付ける重要な証拠となりました。

まとめ:予測と証拠の一致がビッグバンの信頼を高めた

宇宙マイクロ波背景放射の発見や、宇宙の軽い元素の量が理論の予測と一致したこと。これらの観測による「証拠」が積み重なることで、ビッグバン理論は単なる仮説ではなく、宇宙の始まりを説明する最も有力な科学理論として広く受け入れられるようになりました。

もちろん、ビッグバン理論ですべてが分かったわけではありません。宇宙にはまだ多くの謎が残されています。しかし、予測が観測によって裏付けられたという事実は、ビッグバン理論が私たちの宇宙を理解するための、非常に重要な一歩であることを示しているのです。