ゼロからわかるビッグバン

ビッグバン理論って本当? ~宇宙に残された「残り火」の話~

Tags: ビッグバン, 宇宙の始まり, 宇宙論, 宇宙マイクロ波背景放射, 残り火, 証拠

はじめに

このサイトでは、私たちの宇宙がどのように始まったのか、その一つの考え方である「ビッグバン理論」について、ゼロから学んでいきます。

「ビッグバン」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。それは、宇宙が最初はとても小さく、熱く、密度の高い状態から始まり、急激に膨張して今の姿になった、という壮大なお話です。

しかし、本当にそんなことがあったのでしょうか? 目で見ることができない遠い昔の宇宙の出来事について、私たちはどうやって知ることができるのでしょうか。まるで探偵が事件の証拠を探すように、宇宙物理学者たちは、ビッグバンが起こったという「証拠」を探し続けてきました。

今回は、その中でも特に重要な「証拠」の一つについて、分かりやすくお話ししたいと思います。それは、宇宙全体に残されている、「残り火」のような光のお話です。

宇宙の「残り火」とは?

ビッグバン理論が正しいとすると、宇宙が始まったばかりの頃は、光が自由に飛び回れないほど、物質がぎゅうぎゅうに詰まっていて、とても熱い状態だったと考えられています。例えるなら、分厚い霧の中にいるようなものです。光はすぐに物質にぶつかってしまい、遠くまで届きません。

しかし、宇宙は時間とともにどんどん膨らんでいきました。宇宙が広がるにつれて温度は下がり、物質の密度も薄くなっていきました。そして、宇宙が生まれてから約38万年ほど経った頃、ついに光が物質に邪魔されずに、まっすぐ進めるようになりました。この時代を「宇宙の晴れ上がり(光が自由に飛び回れるようになった時代)」と呼びます。

この時、宇宙を満たしていた光が、そのまままっすぐに宇宙空間を旅し始めたのです。そして、その光は、なんと今でも宇宙のあらゆる方向から私たちに届いていると考えられています。

この、宇宙が晴れ上がった頃の「名残りの光」こそが、「宇宙の残り火」と呼ばれるものなのです。正式には「宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバンの“残り火”のような光)」と呼ばれています。

どうやって「残り火」が見つかったの?

この宇宙の「残り火」は、人間の目には見えません。これは、遠い昔の光が、宇宙の膨張によって波長が非常に長くなり、「マイクロ波」という電波のようなものになっているからです。

1960年代のことです。アメリカの研究者たちが、アンテナを使って宇宙からの電波を調べている最中に、どうしても消えない「ノイズ」のようなものがあることに気づきました。どんな方向に向けても、どんな時間帯でも、同じように聞こえるそのノイズは、地球上の原因では説明できませんでした。

彼らは、このノイズこそが、ずっと前に理論で予言されていた「宇宙マイクロ波背景放射」、つまりビッグバンの「残り火」ではないかと考えたのです。そして、この発見は、ビッグバン理論を強く支持する決定的な証拠となりました。

「残り火」が教えてくれること

宇宙の「残り火」は、ただ見つかっただけではありません。その光の性質を詳しく調べることで、初期の宇宙がどのような状態だったのかを知ることができます。

驚くべきことに、この「残り火」は、宇宙のどの方向を見ても、ほぼ同じ温度で、非常に均一であることが分かっています。これは、ビッグバンが起こった直後の宇宙が、非常に滑らかで、ほとんどムラのない状態だったことを示唆しています。

この均一性は、現在の宇宙に銀河や星が集まっている「ムラ」があることとは対照的です。しかし、このわずかな温度のムラ(非常に小さな差)の中にこそ、後に銀河や星が生まれる「種」があったと考えられています。

まとめ

今回お話しした「宇宙の残り火」、つまり「宇宙マイクロ波背景放射」は、ビッグバン理論が単なる想像のお話ではなく、観測に基づいた科学的な理論であることを示す、非常に大切な「証拠」です。

宇宙の始まりから長い時間を旅して私たちに届いたこの光は、まるで遠い昔の宇宙からのメッセージのようです。このメッセージを読み解くことで、私たちは自分たちの宇宙のルーツを知ることができるのです。

ビッグバン理論には、他にもいくつかの重要な「証拠」があります。これからも、一つずつゆっくりと、宇宙の始まりの謎に迫っていきましょう。