ビッグバン理論はなぜ信じられるようになったの? ~科学的な歩みのお話~
はじめに
宇宙の始まりについて考えるとき、「ビッグバン」という言葉を耳にすることがあるかと思います。ビッグバン理論は、今からおよそ138億年前に、宇宙全体が非常に小さく熱い状態から始まり、それから大きく広がり続けて今のようになった、という考え方です。
この考え方は、今では多くの科学者に受け入れられています。しかし、最初からすんなり受け入れられたわけではありませんでした。このお話では、ビッグバン理論がどのようにして、科学的な考え方として確かなものとなっていったのか、その歩みをたどってみたいと思います。
昔の宇宙の考え方
科学の歴史を振り返ってみると、人間は古くから宇宙について様々な考えを持っていました。多くの科学者は、宇宙は昔からずっと今のままの姿で、変わらずに存在し続けている「静的な宇宙」だと考えていました。つまり、宇宙は始まりも終わりもなく、広がりも縮みもしない、安定したものだと想像していたのです。
宇宙が「膨らんでいる」という発見
そんな中、20世紀に入ってから、宇宙の様子を詳しく調べられるようになりました。望遠鏡の性能が上がり、遠くの宇宙の星々(これを「銀河」と呼びます)の光を観測した科学者がいました。
その観測から、驚くべき事実が分かったのです。遠くにある銀河ほど、私たちからどんどん遠ざかっているように見える、ということです。しかも、遠い銀河ほど速く遠ざかっていることも分かりました。まるで、宇宙全体がゴム風船のように膨らんでいて、その風船の表面に描かれた点(銀河)と点の距離が、風船が膨らむにつれてどんどん離れていくようなイメージです。
この「宇宙が膨らんでいる(膨張している)」という発見は、昔ながらの「静的な宇宙」という考え方を大きく揺るがしました。宇宙が膨張しているということは、時間を巻き戻していくと、宇宙はどんどん小さく、密度が高くなっていったはずだ、という考えにつながります。
ビッグバン理論の誕生と抵抗
宇宙が昔は小さかった、という考えから、「もしかしたら、宇宙は非常に小さく熱い一点から始まったのではないか?」と考える科学者が現れました。これが、ビッグバン理論の始まりとなる考え方の一つです。
しかし、この新しい考え方は、最初からみんなに歓迎されたわけではありませんでした。「宇宙が始まった」というイメージは、それまでの「ずっと変わらない宇宙」という考え方に慣れていた人々にとって、なかなか受け入れにくいものだったのです。ビッグバンという言葉自体も、実はこの理論をからかうために、ある科学者が名付けたのが始まりだと言われています。
宇宙の「残り火」が見つかった!
ビッグバン理論は、宇宙が昔は非常に熱く、光が自由に飛び回れないような状態だった、と予言していました。そして、宇宙が膨張して冷えていくにつれて、その熱かった時代の光が、今でも宇宙のあらゆる方向からやってきているはずだ、と考えられていました。これを「宇宙マイクロ波背景放射」(ビッグバンの“残り火”のような光)と呼びます。
1960年代になって、まさにこの「宇宙の残り火」のような光が、偶然にも発見されました。宇宙のどこを見ても、かすかな電波(光の一種です)がやってくることが分かったのです。この光は、ビッグバン理論が予言していた、宇宙が非常に熱かった時代の名残だと考えられています。
この発見は、ビッグバン理論が単なる想像ではなく、実際に観測によって裏付けられる可能性のある、非常に有力な科学的な考え方であることを示しました。
多くの証拠に支えられる現代
宇宙マイクロ波背景放射の発見以降も、様々な観測や研究が進められました。遠くの銀河の詳しい観測、宇宙に存在する軽い元素(ヘリウムなど)の量の測定など、多くの証拠がビッグバン理論の考えとよく一致することが分かってきました。
科学の世界では、一つの考え方が正しいかどうかは、それがどれだけ多くの観測や実験で確かめられるかによって判断されます。ビッグバン理論は、たくさんの観測結果によって強く支持されているため、現在では宇宙の始まりを説明する最も有力な理論として広く受け入れられているのです。
もちろん、宇宙にはまだ分からないことがたくさんありますし、ビッグバン理論自体も進化し続けています。しかし、この理論が、昔の宇宙観から、宇宙の膨張や「残り火」といった発見を経て、確かな科学的な考え方として認められるようになった歩みは、科学がどのように進んでいくのかを示す興味深いお話です。
まとめ
ビッグバン理論は、宇宙が昔は非常に小さく熱い状態から始まり、膨張して今のようになった、という考え方です。この理論は、最初から信じられていたわけではありませんでした。宇宙が膨張しているという発見があり、さらに宇宙の「残り火」のような光(宇宙マイクロ波背景放射)が見つかったことで、その正しさが強く裏付けられました。
このように、ビッグバン理論は、多くの科学的な観測や発見によって、宇宙の始まりを説明する最も有力な考え方として受け入れられるようになったのです。