ゼロからわかるビッグバン

ビッグバン理論って、どうして『理論』って言うの?

Tags: ビッグバン理論, 宇宙論, 科学理論, 証拠, 宇宙の始まり

はじめに

このウェブサイトでは、私たちの宇宙がどのように始まったのか、最も有力だと考えられている「ビッグバン理論」について、皆さんと一緒に学んでいきたいと考えています。

ビッグバン、という言葉を聞くと、「とても大きな爆発があったのかな?」とか、「本当にそんなことがあったの?」と、色々な疑問が浮かんでくるかもしれませんね。そして、「理論」という言葉がつくと、「これはあくまで推測の一つなのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

科学の世界で「理論」と呼ばれるものは、普段私たちが使う「なんとなくの予想」や「アイデア」といった意味合いとは、少し違います。

では、なぜビッグバンに関する考え方は、「ビッグバン理論」と呼ばれるほど、確かなものとして受け止められているのでしょうか? 今回は、その「理論」という言葉に込められた意味と、ビッグバン理論が信頼されている理由について、分かりやすくお話ししたいと思います。

科学で言う「理論」って、どんなもの?

私たちは日常会話で「私の理論ではこうだ」のように、「自分なりの考え」や「根拠は薄いけれど推測」といった意味で「理論」という言葉を使うことがあります。

しかし、科学の世界で「理論」と言うときには、もっとしっかりとした意味があります。科学的な「理論」とは、たくさんの研究者たちが集めた様々な証拠(観測や実験の結果)によって、しっかりと裏付けられている、物事の最も信頼できる説明のことです。

つまり、単なる思いつきや仮説ではなく、繰り返し行われた観測や実験で確かめられた事実に基づいて、どうしてそうなるのかを筋道立てて説明できる考え方が、科学的な「理論」なのです。

科学の理論は、新しい証拠が見つかったり、より詳しい研究が進んだりすることで、修正されたり、さらに発展したりすることはありますが、たくさんの証拠に支えられている限り、最も確かな考え方として広く受け入れられます。

ビッグバン理論が「理論」と呼ばれる理由

ビッグバン理論が、なぜ単なる仮説やアイデアではなく、科学的な「理論」と呼ばれているのか。それは、この理論が、私たちの宇宙について観測されたたくさんの証拠と、とてもうまく合っているからです。

具体的に、ビッグバン理論を強く支えている、代表的な証拠をいくつかご紹介しましょう。

一つ目は、宇宙が広がっている(膨張している)という発見です。遠くの銀河ほど速く遠ざかっているという、観測による確かな事実があります。これは、まるで風船を膨らませたときに、風船の表面に描かれた点が互いに遠ざかっていくように、宇宙全体が伸びていると考えられます。ビッグバン理論は、宇宙がかつて非常に小さく高温な状態から始まり、それ以来ずっと膨張を続けていると考えることで、この観測結果を自然に説明できます。

二つ目は、宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれる、宇宙のあらゆる方向からやってくるかすかな光です。これは、ビッグバンが起きてからしばらく経った頃の、宇宙の「残り火」のような光だと考えられています。実際にこの光が観測され、その性質がビッグバン理論の予測と驚くほどよく一致していることが分かりました。これは、ビッグバンが確かにあったことを示す、非常に強力な証拠とされています。

三つ目は、宇宙にある軽い元素(水素やヘリウム)の割合です。私たちの宇宙にある物質の大部分は、水素とヘリウムという軽い元素でできています。ビッグバン理論に基づいて計算すると、宇宙が始まったばかりの高温状態の時に、これらの元素がどのくらいの割合で作られたかを予測できます。そして、実際に観測によって確かめられた宇宙の水素とヘリウムの割合が、ビッグバン理論の予測と非常によく合っているのです。

これらの他にも、ビッグバン理論を支持する観測による証拠はたくさんあります。

まとめ

ビッグバン理論は、単なる想像話ではなく、宇宙の膨張、宇宙の「残り火」、軽い元素の割合といった、観測によって得られた様々な確かな証拠によって、しっかりと裏付けられている考え方です。

そのため、現在の宇宙の姿や、どのように進化してきたのかを最もよく説明できる、最も信頼性の高い科学的な説明として、「ビッグバン理論」と呼ばれているのです。

もちろん、ビッグバン理論が宇宙の全てを解き明かしたわけではありません。まだ分かっていないことや、これから解き明かされるであろう謎もたくさんあります。しかし、ビッグバン理論は、私たちが宇宙の始まりを理解するための、揺るぎない土台となっているのです。