ゼロからわかるビッグバン

ビッグバン理論は、どうやって宇宙の『昔の姿』を見ているの?

Tags: ビッグバン理論, 宇宙の観測, 宇宙マイクロ波背景放射, 宇宙の歴史, 光

ビッグバン理論って、どうして昔のことが分かるの?

ビッグバン理論は、今からおよそ138億年前に、宇宙がとても小さく熱い状態から始まり、それがだんだんと広がってきたというお話です。壮大な物語ですが、「そんなに昔のこと、どうして分かるんだろう?」と不思議に思われるかもしれません。

私たちは、タイムマシンに乗って宇宙の始まりを見に行ったわけではありません。実は、その答えは「光」に隠されています。科学者たちは、宇宙から届く「光」を、特別な方法で「見る」ことで、遠い遠い昔の宇宙の姿を知ることができるのです。

光は宇宙のタイムカプセル

私たちが見ている光は、目に見える光だけではありません。電波や赤外線など、さまざまな種類の光があります。光は、私たちの目には見えない速さで進みますが、それでも速さには限りがあります。

たとえば、遠くの星から出た光が私たちのもとに届くまでには、時間がかかります。月からの光は1秒少々、太陽からの光は約8分かかります。もっと遠い星からの光だと、何年も、何万年も、何億年もかかります。

つまり、遠い宇宙から届く光ほど、昔の宇宙から出発した光なのです。まるで、過去の情報を運んでくる「タイムカプセル」のようですね。私たちは、遠い宇宙を見上げることで、自動的に昔の宇宙の姿を見ていることになります。

ビッグバン時代の「残り火」を見る

ビッグバン理論によれば、宇宙が生まれて間もない頃は、光が自由に飛び回ることができないほど、とても熱くぎゅうぎゅう詰めでした。しかし、宇宙が広がって温度が下がってくると、光がまっすぐ進めるようになりました。この出来事を「宇宙の晴れ上がり(光が自由に飛び回れるようになった時代)」と呼んでいます。

この時に宇宙空間に放たれた光は、およそ138億年かけて今も宇宙を飛び回り続けています。この光を「宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバンの“残り火”のような光)」と呼んでいます。

この「残り火」は、宇宙がまだ生まれて間もない頃の、言わば「赤ちゃんの頃の宇宙」の姿そのものです。ビッグバン理論の正しさを裏付ける、とても大切な証拠の一つなのです。

特別の「目」で昔の光を捉える

さて、このビッグバンの「残り火」は、長い旅の間にエネルギーを失い、今では目に見える光ではなく、「電波」という形に変わっています。ですから、普通の望遠鏡や私たちの目では見ることができません。

科学者たちは、この微弱な電波を捉えるために、特別な電波望遠鏡を使ったり、宇宙に観測用の人工衛星を打ち上げたりしています。これらの特別な観測装置が、宇宙全体に満ちている「残り火」の光を詳細に捉え、私たちに昔の宇宙の様子を教えてくれるのです。

宇宙の歴史を読み解く

これらの観測によって、「宇宙マイクロ波背景放射」にはわずかな「ムラ」があることが分かっています。温度や密度のわずかな違いが、光の強さのムラとして残されているのです。この小さな「ムラ」こそが、後に星や銀河が生まれるための「タネ」になったと考えられています。

このように、科学者たちは、遠い宇宙から届く光、特にビッグバンの「残り火」のような特別な光を、特別な方法で「見る」ことによって、宇宙がどのように始まり、どのように成長してきたのか、その歴史を読み解いているのです。

まとめ:光が教えてくれる宇宙の始まり

ビッグバン理論は、単なる想像のお話ではありません。宇宙の始まりに関する多くの証拠は、遠い昔の宇宙から届く「光」の観測によって得られています。

科学者たちは、宇宙が放つ光というタイムカプセルを、特別な望遠鏡などの「目」を使って読み解くことで、138億年前の宇宙の姿を知ることができるのです。私たちが今見ている宇宙は、遠い過去から旅してきた光によって形作られていると言えるでしょう。