宇宙が膨らみ続けていると、なぜビッグバンがわかるの？ ～時間をさかのぼる考え方～
はじめに
このウェブサイトでは、宇宙がどのように始まったのかを説明する「ビッグバン理論」について、初めての方にも分かりやすいように解説しています。
さて、ビッグバン理論を考える上で、とても大切な「手がかり」の一つに、「私たちの宇宙は今、膨らみ続けている」という事実があります。
遠くにある銀河ほど、速いスピードで私たちから遠ざかっていることが、観測によって分かっているのです。これはまるで、宇宙全体が風船のように膨らんでいるイメージです。
では、この「宇宙が膨らんでいる」という事実から、なぜ「ビッグバン」という宇宙の始まりの考え方が生まれたのでしょうか？
今回は、その考え方の根本にある、シンプルなたどり方を一緒に見ていきましょう。
宇宙が膨らんでいるという「今」
まず、「宇宙が膨らんでいる」とはどういうことか、少しイメージしてみましょう。
例えば、風船にたくさんの点々を描いて、空気を吹き込んでいく様子を思い浮かべてください。風船が膨らむにつれて、点々の間隔はどんどん広がっていきます。どの点から見ても、他の点々は自分から遠ざかっていくように見えますよね。
私たちの宇宙も、これに似ています。宇宙そのものが大きくなっていて、遠くの銀河ほど、より速く私たちから遠ざかっているように見えるのです。これは、銀河が宇宙空間の中を動いているというよりも、宇宙空間そのものが引き伸ばされて膨張していると考えると、より分かりやすいかもしれません。
科学者たちが遠くの銀河の光を詳しく調べた結果、この「宇宙の膨張」という現象が起きていることが確かな事実として分かっています。
時間をさかのぼってみると…
さあ、ここからが大切な考え方です。
もし、宇宙が今、このように膨らみ続けているのだとしたら、過去に時間をさかのぼっていくと、どうなるでしょう？
今の宇宙が将来もっと大きく広がるなら、その逆、つまり過去にさかのぼればさかのぼるほど、宇宙はもっと小さく、もっとぎゅっと詰まった状態だったはずです。
例えば、成長の記録を写真でさかのぼるようなものです。赤ちゃんの頃、子供の頃、大人の頃…と写真を並べると、時間を戻すにつれて体が小さくなっていきますよね。宇宙も同じように、膨張している今の姿から時間を巻き戻していくと、どんどん小さくなっていったと考えられるのです。
宇宙の始まり、ビッグバンへ
この時間をさかのぼる考え方を、どんどん突き詰めていくと、どうなるでしょうか。
宇宙の歴史をずっとずっと過去へ、始まったばかりの頃へとたどっていくと、宇宙は考えられないほど非常に小さく、そして非常に熱く、そして非常に密度の高い状態だっただろう、という姿が浮かび上がってきます。
そして、その状態から宇宙が急激に、そして勢いよく膨張を始めた瞬間があったのではないか？
この「非常に小さく、熱い状態から宇宙が始まり、急激に膨張した」という考え方が、まさにビッグバン理論の基本的な考え方なのです。
まとめ
このように、「宇宙が今、膨張している」という観測された事実から、時間を逆回しに考えることで、「昔の宇宙は小さく、熱かったはずだ」という結論が導き出されます。
そして、その極限の姿として、「宇宙は一つの非常に小さな点のような状態から始まり、ドーン！と勢いよく膨張を始めた」というイメージが生まれます。これがビッグバン理論の出発点の一つです。
私たちが今見ている宇宙の姿、特に「宇宙が膨らんでいる」という事実が、まるで歴史を映すビデオテープの再生ボタンのように、宇宙の始まりの物語へと私たちを導いてくれるのです。
ビッグバン理論は、この始まりの考え方だけでなく、宇宙に残された様々な「証拠」によっても裏付けられています。それについては、また別の記事で詳しくご紹介していきましょう。