なぜ夜空は真っ暗なの? ~ビッグバン理論が教えてくれること~
夜空のふしぎ ~星はたくさんあるのになぜ?~
澄んだ夜空を見上げると、たくさんの星が瞬いていますね。天の川が見えるような場所では、星の光で空が白っぽく見えることもあります。
でも、宇宙には私たちの天の川銀河だけでなく、数えきれないほどの銀河があり、それぞれにたくさんの星があります。もし宇宙が無限に広くて、無限に古いものだとしたら、どんな方向を見ても必ずどこかの星の光が見えるはずです。そうだとすれば、夜空は昼間のように明るく輝いていてもおかしくないと思いませんか?
それなのに、なぜ夜空は真っ暗なのでしょうか。この素朴な疑問は、実は宇宙の始まりや姿について考える上で、とても大切な手がかりを与えてくれるのです。
ビッグバン理論からの答え
この「なぜ夜空は暗いのか」という疑問に答える鍵の一つが、私たちがこれまで学んできたビッグバン理論です。
ビッグバン理論は、宇宙は無限に昔からあったのではなく、今からおよそ138億年前に、とても小さく、とても熱い状態から始まったと考えています。そして、それ以来ずっと広がり続けている、と説明しています。
この考え方から、夜空の暗さの理由が見えてきます。
まず第一に、宇宙には始まりがありました。つまり、無限に昔から存在していたわけではありません。ですから、宇宙の年齢には限りがあります。光の速さには限りがありますので、遠すぎる場所から出た光は、まだ私たちのところに届いていません。たとえ無限に星があったとしても、私たちの目に見える範囲、つまり光が届く範囲(これを「観測可能な宇宙」と呼びます)には限界があるのです。このため、すべての方向が星の光で埋め尽くされるわけではありません。
第二に、宇宙は広がり続けています。遠くにある銀河ほど、私たちから速いスピードで遠ざかっています。光は波として伝わってきますが、光源(星や銀河)が遠ざかっていると、その波は引き伸ばされてしまいます。例えるなら、救急車のサイレンが遠ざかるときに音が低くなるようなものです。光の場合、波長が引き伸ばされると、私たちの目に見える光(可視光)の範囲を超えて、赤外線などの見えない光になってしまいます。非常に遠い場所からの光は、このように波長が大きく引き伸ばされて、私たちの目には届かなくなってしまうのです。これは「赤方偏移(あかほうへんい)」と呼ばれますが、難しい名前は覚えなくて大丈夫です。「宇宙が広がっているせいで、遠い光は見えなくなるんだな」とご理解いただければ十分です。
夜空の暗さが教えてくれること
夜空が真っ暗であるという当たり前の事実は、このように、宇宙が無限に昔からあったわけではなく、始まりがあり、そして今も広がり続けているという、ビッグバン理論の考え方を裏付けているのです。
夜空の暗さは、宇宙の大きさや年齢、そして今も続く膨張という、宇宙の基本的な性質を教えてくれる、身近な証拠と言えるでしょう。
次回、夜空を見上げたときは、その暗さの中に、ビッグバン理論が解き明かした宇宙の壮大な物語を感じてみてください。