ゼロからわかるビッグバン

宇宙ってどこを見ても同じ? ~ビッグバン理論が教える意外な事実~

Tags: 宇宙, ビッグバン理論, 宇宙の構造, 宇宙マイクロ波背景放射, 宇宙の始まり

はじめに:宇宙はどこを見ても同じ?

夜空を見上げると、星がたくさん見えますね。望遠鏡を使って遠くの宇宙を見ると、そこには星が集まった「銀河(ぎんが)」がたくさんあります。

さらに遠く、もっともっと遠くの宇宙を見るとどうなるでしょうか? 不思議なことに、遠い宇宙も、私たちの近くにある宇宙も、全体として見ると、とても似たような様子に見えることがわかっています。銀河の集まり方も、宇宙に広がるガスの様子も、どちらかといえば均一に見えるのです。

これは、よく考えるととても不思議なことなのです。なぜ宇宙は、どこを見ても同じような様子に見えるのでしょうか? ビッグバン理論は、この不思議な点についても考えを巡らせています。

宇宙の「同じような様子」って、どれくらい同じ?

宇宙の「どこを見ても同じような様子」というのは、具体的にはどんなことでしょうか。

例えば、宇宙全体に満ちている「宇宙マイクロ波背景放射(うちゅうマイクロははいけいほうしゃ)」という光を見てみましょう。これは、ビッグバンの「残り火」とも呼ばれる、宇宙が始まった頃のごく初期の光です。

この光を詳しく調べてみると、宇宙のあらゆる方向から、ほとんど同じ強さでやってきていることが分かりました。温度にわずかな違いはありますが、全体としては驚くほど均一なのです。これは、宇宙が始まった頃の姿が、どの方向を見てもほとんど同じだった、という強い証拠になります。

この「同じ」がなぜ不思議なの?

さて、ここで一つの疑問が生まれます。宇宙は今、どんどん広がっていますね。これは、宇宙が生まれたビッグバンから続いている動きです。

宇宙が広がっているということは、遠く離れた場所にあるものは、今は遠くても、宇宙がもっと小さかった昔はもっと近かった、ということになります。

でも、宇宙マイクロ波背景放射が教えてくれる宇宙の「始まりの頃」は、遠く離れた場所同士は、そもそも光の速さでも情報が伝われないくらい、十分に離れていたはずなのです。お互いに影響を与え合ったり、情報交換をしたりすることができなかった場所同士が、どうしてあんなにも「同じような状態」になれたのでしょうか?

これは科学者たちにとって、長い間の大きな疑問でした。まるで、全く連絡を取り合ったことがない二人の人が、何もかも同じ考え方や趣味を持っていた、というような、不思議な状況に似ています。

ビッグバン理論からのアイデア

この「宇宙がどこを見ても同じような様子に見える不思議」に対して、ビッグバン理論では一つの有力な考え方があります。

それは、「宇宙が始まったごくごく初期のごく短い時間に、考えられないほど急激に広がった」というアイデアです。これを専門的には「インフレーション」と呼ぶこともありますが、難しく考える必要はありません。

例えるなら、最初はとても小さかった宇宙の「種」のようなものが、一瞬のうちに風船のようにものすごく大きく膨らんだ、というイメージです。

もし、宇宙がこのような急激な広がり方を経験したとすると、どうなるでしょうか。今、遠く離れていて連絡が取れない場所も、急激に広がる前は、実はとても近くに集まって、お互いに影響を与え合える関係だった、と考えることができます。

つまり、急激な広がりが起きる前に、宇宙全体が小さくまとまって「同じような状態」になる時間があった、ということになります。そして、その「同じような状態」になった宇宙が、一気に引き伸ばされて、今の広大な宇宙になった、というわけです。

まとめ

宇宙を見上げたときに、どこを見ても全体として似たような景色に見えるのは、実はとても不思議なことでした。特に、宇宙の始まりの「残り火」が驚くほど均一に見えることは、この不思議さを際立たせます。

ビッグバン理論は、この宇宙の「同じような様子」を説明するために、宇宙がごく初期にごく短い時間で「ものすごく急激に広がった」というアイデアを提案しています。

この考え方が正しいかどうか、科学者たちは今も様々な方法で宇宙を詳しく調べています。しかし、少なくともビッグバン理論は、私たちの宇宙にある様々な不思議な性質に対して、一つ一つ説明を与えようと努力しているのです。