宇宙の『昔の姿』はなぜ見えるの? ~遠い光が教えてくれる宇宙の過去~
ビッグバン理論は、どうやって宇宙の「昔」を知るの?
ビッグバン理論は、「宇宙は昔、とても小さくて熱く、そこからどんどん広がってきた」と考える理論です。この理論によって、私たちは宇宙がどのように生まれ、今の姿になるまでにどんな歴史をたどってきたのかを知ることができます。
でも、ちょっと考えてみてください。宇宙はとても広大で、遠い場所のことは、なかなか分かりませんよね。ましてや、宇宙が始まったばかりの「昔」の様子なんて、どうやって調べることができるのでしょうか?タイムマシンに乗って見に行くこともできません。
実は、その秘密は「光」にあるのです。
光は、一瞬で届くわけではない
私たちは、ものを見るとき、そこから出てくる光や、光が反射して届くのを見ています。地球の上では、電気がついたり、太陽の光が届いたりするのは一瞬のように感じられますね。光はとても速く進むからです。
しかし、どんなに速い光でも、進むのに全く時間がかからないわけではありません。ほんのわずかですが、光も移動するのに時間がかかっています。地球上の短い距離ではその時間は感じられませんが、相手がとても遠い場所にある場合はどうなるでしょう?
遠くの光は「昔」の光
宇宙は、私たちの想像をはるかに超える広さを持っています。星と星の間、銀河と銀河の間は、途方もなく離れています。
例えば、私たちから一番近い恒星(太陽以外)である「プロキシマ・ケンタウリ」という星をご存知でしょうか。この星からの光が地球に届くまでには、なんと4年以上もかかります。
これはつまり、私たちが今見ているプロキシマ・ケンタウリの姿は、「今の姿」ではなく、4年以上前の姿だということになります。光がその星を出発して、地球に届くまでに4年以上かかったからです。
宇宙にあるもっともっと遠い星や銀河から届く光は、数百万年、数億年、時には百億年以上もかかって地球にたどり着きます。
ですから、私たちが遠くの宇宙を見るとき、それはまるでタイムマシンに乗っているかのように、宇宙の「昔の姿」を見ていることになるのです。遠ければ遠いほど、それはより大昔の宇宙の姿ということになります。
宇宙の「昔の姿」は、ビッグバン理論の大きな手掛かり
ビッグバン理論を研究する科学者たちは、このように「遠い場所ほど昔の姿が見える」という光の性質を利用しています。
非常に遠く、そして薄暗く見える天体からの光を観測することで、宇宙がまだ若かった頃、星や銀河ができ始めた頃の様子を知ることができるのです。
さらに、宇宙の始まりからおよそ38万年後に放たれたと考えられている「宇宙マイクロ波背景放射(ビッグバンの“残り火”のような光)」は、宇宙で最も古い光として、ビッグバン理論の確かさを裏付ける大切な証拠となっています。
まとめ
ビッグバン理論が宇宙の始まりや歴史を語ることができるのは、光が宇宙を旅するのに時間がかかり、遠くの宇宙から届く光が「昔の姿」を伝えてくれるからです。
私たちは遠い宇宙を見ることで、何十億年、何百億年も前の宇宙の姿を直接見ていることになります。これが、ビッグバン理論が宇宙の歴史を読み解く上で、とても大切な考え方の一つなのです。