宇宙はどこへ向かうの? ~ビッグバン理論と未来のお話~
はじめに
私たちの宇宙は、およそ138億年前にビッグバンという出来事から始まったと考えられています。この「ゼロからわかるビッグバン」シリーズでは、これまでの記事で、ビッグバンがどんなものだったのか、宇宙がどのように変わってきたのか、といった過去のお話を中心にお話ししてきました。
でも、ビッグバン理論は、宇宙の過去だけではなく、これから先の遠い未来についても、いくつかの可能性を示唆しています。宇宙はこれからもずっと今のままなのでしょうか? それとも、何か大きな変化を迎えるのでしょうか?
今回は、ビッグバン理論が教えてくれる、宇宙のこれからについて、一緒に考えてみましょう。
宇宙は今も膨らんでいる
宇宙の未来を考える上で、とても大切なことがあります。それは、「宇宙は今も膨らみ続けている」ということです。
これは、風船を膨らませるように、宇宙空間そのものが広がっている、ということです。たとえ話として、風船の表面に星や銀河が貼り付いている様子を想像してみてください。風船を膨らませると、風船の表面が広がり、貼り付いた星や銀河同士の距離が離れていきますね。宇宙も、これと似たように、全体が広がっているのです。
この「宇宙の膨張」という発見が、ビッグバン理論が考えられる大きなきっかけの一つになりました。
未来の宇宙の姿は何で決まる?
では、この宇宙の膨張は、これからもずっと続くのでしょうか? それとも、いつか止まったり、縮み始めたりするのでしょうか?
宇宙の未来の姿は、この「膨張の勢い」と、宇宙の中にある「物質が引き合う力」(これを「重力」と呼びます)のバランスで決まると考えられています。
例えるなら、真上に投げ上げたボールのようなものです。勢いよく投げれば、ボールはしばらく上昇し続けます。でも、地球の重力がボールを下に引きつけますね。
もし、投げ上げる勢いがとても強ければ、ボールは重力に逆らって宇宙まで飛んでいってしまうかもしれません。逆に、勢いが弱ければ、ボールは途中で止まって落ちてくるでしょう。
宇宙の膨張もこれに少し似ています。宇宙を広げようとする勢いと、宇宙の中の星や銀河などが互いに引き合う力(重力)が、綱引きをしているようなものです。
いくつかの考えられる未来の形
この綱引きの結果によって、宇宙の未来にはいくつかの異なる可能性があると考えられていました。
- いつまでも広がり続ける未来: 膨張の勢いが重力に打ち勝ち、宇宙がこれからもずっと広がり続ける場合です。星や銀河はどんどん遠ざかり、宇宙全体はどんどん冷えていくと考えられます。
- いつか膨張が止まる未来: 膨張の勢いと重力がちょうどバランスを取り、宇宙の膨張がいつかゆっくりになって止まる場合です。
- いつか縮み始める未来: 重力の力が膨張の勢いに勝ってしまい、宇宙の膨張がやがて止まり、今度は逆に縮み始める場合です。もしそうなれば、宇宙は始まりの時のように、再び一点に集まっていくことになるかもしれません。
これらの未来の形は、宇宙の中にどれくらいの物質(重力のもとになるもの)があるかによって変わってくると考えられてきました。
現在の観測ではどう考えられている?
長い間の観測と研究の結果、科学者たちは宇宙の膨張について、驚くべき発見をしました。それは、宇宙の膨張は減速するどころか、どうやら加速しているらしい、ということです。
これは、先ほどのボールの例えで言うと、ボールを投げ上げた後、重力でスピードが落ちるどころか、さらにスピードが速くなっている、というような、少し不思議な状況です。
この「加速膨張」の原因については、まだ全てが解明されているわけではありませんが、「ダークエネルギー」と呼ばれる未知の力が働いているのではないかと考えられています(詳しい説明はここではしませんが、宇宙をさらに広げようとする謎の力があるらしい、とお考えください)。
もしこの加速膨張が続くのであれば、宇宙はこれから先もいつまでも広がり続ける可能性が高いと考えられています。
まとめ
ビッグバン理論は、宇宙の始まりだけでなく、遠い未来についても想像を巡らせる手がかりを与えてくれます。
宇宙が今も膨張していること、そしてその膨張の勢いと、宇宙の中の物質の重力が、未来の宇宙の形を決める大切な要素であることを見てきました。
現在の観測からは、宇宙の膨張はどうやら加速しているらしく、このまま宇宙は広がり続ける可能性が高いと考えられています。
もちろん、これはあくまで現時点での私たちの理解です。宇宙にはまだたくさんの謎が残されています。しかし、ビッグバン理論を通して、私たちは宇宙の壮大な過去に思いを馳せるだけでなく、果てしない未来についても考えることができるのです。