ゼロからわかるビッグバン

ビッグバンから38万年後のお話 ~宇宙が「晴れた」ってどういうこと?~

Tags: ビッグバン, 宇宙の始まり, 宇宙の歴史, 宇宙の晴れ上がり

宇宙の始まりは、光が自由に飛び交えない世界だった

宇宙の始まりであるビッグバンの頃は、宇宙は非常に小さく、そして想像を絶するほど熱い状態でした。まるで超高温のガスのようなものです。

その頃、宇宙にはたくさんの小さな粒(素粒子)がぎゅうぎゅう詰めに詰まっていました。光もそこにいましたが、粒と粒の間をまっすぐに進むことができませんでした。まるで、霧が立ち込めた中では遠くが見えないのと同じように、光はすぐに他の粒にぶつかってしまい、あちこちに散乱してしまっていたのです。

そのため、この頃の宇宙は、光にとっては「不透明」な世界だったと言えます。私たちはこの時代の宇宙を直接「見る」ことはできません。

宇宙が広がり、だんだん冷えていく

ビッグバンが起きてから、宇宙はずっと広がり続けてきました。宇宙が広がると、その中にあったもの全体が引き伸ばされることになり、温度もだんだんと下がっていきます。

熱かったお湯が、広いお風呂に移すとぬるくなるようなイメージでしょうか。もちろん、宇宙の広がりはもっと壮大で、冷え方も特別なものですが、基本的な考え方は同じです。

宇宙の温度が下がっていくにつれて、バラバラだった小さな粒たちが結びつき始めました。

約38万年後、「宇宙の晴れ上がり」が訪れた

ビッグバンからおよそ38万年ほど経った頃、宇宙の温度はだいたい3000度くらいまで下がってきました。これは今の宇宙に比べればまだまだ熱いですが、それまでの超高温状態からは大きく冷えたことになります。

この温度になったとき、宇宙にあった「陽子」や「電子」といった小さな粒たちが、互いに結びついて「原子」という安定したまとまりを作れるようになりました。ちょうど、水素原子やヘリウム原子といった、宇宙で最も基本的な原子が生まれたのです。

原子ができると、それまで光を邪魔していた「電子」が原子の中に閉じ込められるような形になりました。すると、光は他の粒にぶつかることがぐっと減り、宇宙空間をまっすぐに、遠くまで飛んでいけるようになったのです。

この出来事を、私たちは「宇宙の晴れ上がり」と呼んでいます。それまで霧がかかったように不透明だった宇宙が、まるで空が晴れたかのように「透明」になり、光が自由に旅を始められるようになったのです。

「晴れ上がり」の光は、今も宇宙に残っている

宇宙の晴れ上がりによって自由になった光は、それから138億年という長い時間をかけて宇宙空間を旅し続けています。その光は、今も地球に届いていて、特別な望遠鏡で見つけることができます。

この光は、宇宙の始まりの様子を今に伝える「残り火」のようなものです。「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれるこの光は、ビッグバン理論が正しいことの、とても大切な証拠の一つとされています。(この光がどう見つかったのかは、別の記事でも詳しく解説しています。)

まとめ:宇宙が「見通せる」ようになった大切なタイミング

「宇宙の晴れ上がり」は、ビッグバンから約38万年後に起こった、宇宙の歴史の中で非常に重要な出来事です。

この時、宇宙の温度が下がり、光を邪魔していた粒が原子になったことで、宇宙は初めて「透明」になりました。これにより、光は遠くまで届くようになり、私たちはその時代の宇宙の様子を「残り火」として観測することができるようになったのです。

この晴れ上がりの光があるおかげで、私たちはビッグバン理論を裏付ける確かな手掛かりを得て、宇宙の始まりの姿を知ることができるのです。

初めて宇宙が「見通せる」ようになった、そんな記念すべきタイミングだったと言えるでしょう。