ゼロからわかるビッグバン

なぜ私たちの宇宙には水素とヘリウムが多いの? ~ビッグバン理論の証拠~

Tags: ビッグバン理論, 宇宙の元素, 水素, ヘリウム, 宇宙の証拠, 元素合成

宇宙にある「もの」を見てみましょう

私たちが住むこの宇宙には、さまざまな「もの」、つまり物質が存在しています。例えば、私たちの体、地球、太陽、遠くの星々。これらはすべて、「元素」という小さな粒の組み合わせでできています。

元素にはたくさんの種類がありますが、実は宇宙全体で見ると、ある特定の元素が圧倒的に多いことが分かっています。それは、「水素(すいそ)」と「ヘリウム」という、とても軽い二種類の元素です。

なぜ水素とヘリウムがこんなに多いの?

なぜ宇宙は、こんなにも水素とヘリウムが多いのでしょうか? この素朴な疑問の答えの中に、宇宙がどのように始まったのかを考える上で、とても大切な手がかりが隠されているのです。

その手がかりこそが、「ビッグバン理論」が私たちに教えてくれることの一つです。

ビッグバン直後の宇宙はどんな場所?

ビッグバン理論では、今から約138億年前、宇宙は非常に小さく、超高温で超高密度の状態だったと考えられています。例えるなら、宇宙全体が、想像もできないほど熱くてぎゅっと詰まった「スープ」のような状態だった、と言えるかもしれません。

このような、とてつもなくエネルギーの高い状態では、原子というものがまだ安定して存在できませんでした。もっと基本的な、陽子(ようし)や中性子(ちゅうせいし)といった粒が飛び交っていたのです。

軽い元素が作られた「宇宙の工場」

宇宙がビッグバンによって急激に膨張(ぼうちょう)し始めると、その「スープ」のような状態は少しずつ冷えていきます。しかし、まだ非常に高温な状態が続きました。

この、宇宙が生まれてからほんの数分間の短い時間の間、宇宙はまるで「元素を作る工場」のようにふるまいました。飛び交っていた陽子や中性子が、熱いスープの中で互いにくっつき合い、より重い粒を作り出したのです。

この時、主に作られたのが、水素の原子核(陽子1つ)と、ヘリウムの原子核(陽子2つと中性子2つ)でした。温度が高すぎたため、これより重い元素はほとんど作られませんでした。

ビッグバン理論の「予測」

ビッグバン理論の研究者たちは、この宇宙の「元素工場」がどれくらいの水素とヘリウムを作り出すかを計算しました。その計算によると、宇宙に存在する原子核の質量の割合で言うと、約75%が水素、約25%がヘリウムになるだろう、と予測されたのです。

つまり、ビッグバン理論は、「もし宇宙がビッグバンから始まったのなら、宇宙の元素は水素とヘリウムが圧倒的に多く、その比率はだいたい3対1くらいになるはずだ」と予言したのです。

そして「観測」が見つかった

科学者たちは、実際に遠くの宇宙にあるガス雲などを観測し、そこに含まれる水素とヘリウムの割合を調べました。

すると驚くことに、その観測結果は、ビッグバン理論が予測した「水素約75%:ヘリウム約25%」という割合と、とてもよく一致したのです。

これは偶然とは考えにくい、非常に重要な一致でした。

なぜこの一致が大切なの?

この、「ビッグバン理論が予測した元素の割合」と「実際に観測された宇宙の元素の割合」が一致した、という事実は、ビッグバン理論が正しいと考えるための、とても強力な証拠の一つとなりました。

まるで、宇宙が自らの始まりについて、「私はビッグバンから始まった証拠として、水素とヘリウムをこの割合で作っておきましたよ」と語りかけてくれたかのようです。

まとめ:宇宙の元素の割合が教えてくれること

このように、私たちの宇宙に水素とヘリウムが圧倒的に多いのは、宇宙が生まれて間もない頃の、超高温高密度の状態で作られた痕跡だと考えられています。

そして、その作られた割合が、ビッグバン理論の計算とぴったり一致したことは、宇宙が本当にビッグバンから始まった、という理論を強く後押しする証拠となったのです。

普段、目にする機会は少ないかもしれませんが、宇宙に遍在(へんざい)する水素とヘリウムの比率は、宇宙の始まりの物語を静かに語り続けているのですね。