科学者はなぜビッグバン理論を信じているの?
はじめに:なぜビッグバン理論が広く受け入れられているのか
このウェブサイトでは、宇宙の始まりについて考える上で、現在最も広く受け入れられている「ビッグバン理論」について、分かりやすくお話ししています。
宇宙が、今からおよそ138億年前に、非常に小さく熱い状態から始まり、だんだんと広がって今の姿になった、というのがビッグバン理論の考え方です。
しかし、「どうしてそんなことが言えるのだろう?」、「なぜ科学者はこのビッグバン理論を、宇宙の始まりを説明する考え方として信じているのだろう?」と不思議に思われるかもしれません。
実は、このビッグバン理論を裏付ける、宇宙からのいくつかの「証拠」が見つかっているのです。ここでは、科学者がビッグバン理論を信じる主な理由、つまり宇宙からの証拠について、いくつかご紹介したいと思います。
証拠その1:宇宙が「膨らんでいる」こと
まず一つ目の大きな証拠は、「宇宙が膨らんでいる(膨張している)」という事実です。
遠くにある銀河ほど、私たちから速いスピードで遠ざかっていることが、観測によって確かめられています。これは、宇宙全体が風船のように膨らんでいる様子に例えることができます。風船の表面に描かれた点が、風船が膨らむと互いに離れていくのと同じように、宇宙の銀河もまた互いに離れていっているのです。
宇宙が今も膨らみ続けているということは、時間を巻き戻して考えてみると、昔の宇宙は今よりもずっと小さく、密度の高い状態だったはずだ、という考えにつながります。これは、ビッグバン理論の「宇宙はかつて小さく熱い一点だった」という考え方を強く後押しする証拠となりました。
証拠その2:宇宙に残された「残り火」
二つ目の重要な証拠は、「宇宙マイクロ波背景放射(うちゅうマイクロははいけいほうしゃ)」と呼ばれるものです。これは、ビッグバンの「残り火」のような光だと考えられています。
ビッグバンの直後、宇宙は非常に高温で、光が自由に動き回ることができませんでした。しかし、宇宙が膨らんで温度が下がり、ある時点(宇宙の晴れ上がりと呼ばれます)から、光がまっすぐ進めるようになりました。この時の光が、今も宇宙のあらゆる方向から私たちに届いているのです。
宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙全体に満ちている非常に微弱な電波(マイクロ波)として観測されています。これは、ビッグバン理論が予測していた「宇宙の初期の熱い時代の名残りの光があるはずだ」という考えと、見事に一致しました。この発見は、ビッグバン理論が広く受け入れられる決定的な証拠の一つとなりました。
証拠その3:宇宙にある軽い元素の量
三つ目の証拠は、宇宙に存在する水素やヘリウムといった「軽い元素」の量の比率です。
ビッグバンのごく初期の、非常に高温で密度の高い状態では、陽子や中性子といった宇宙の材料が互いにくっついて、水素やヘリウムといった軽い原子核が作られたと考えられています。
理論的に計算すると、その時に作られた水素とヘリウムの量の比率は、宇宙の初期の条件によって決まります。そして、実際に宇宙に存在する水素とヘリウムの量を観測してみると、ビッグバン理論が予測する比率と非常によく一致していることが分かっています。
これは、宇宙がかつてビッグバン理論が描くような、非常に熱く密度の高い時代を経験したことの、強力な証拠の一つとされています。
まとめ:なぜ科学者はビッグバン理論を信じるのか
科学者がビッグバン理論を宇宙の始まりを説明する最も有力な考え方として信じているのは、このように、宇宙からのさまざまな「証拠」がこの理論を裏付けているからです。
- 宇宙が今も膨張していること
- ビッグバンの「残り火」である宇宙マイクロ波背景放射が見つかったこと
- 宇宙に存在する軽い元素の量がビッグバン理論の予測と合っていること
これらの証拠は、それぞれが独立して見つかったものですが、どれも「宇宙はかつて小さく熱い状態から始まり、膨張してきた」というビッグバン理論の考え方と、驚くほどよく一致しています。
もちろん、ビッグバン理論でもまだ説明できない宇宙の謎はたくさんあります。しかし、これらの確かな証拠があるからこそ、ビッグバン理論は現在、宇宙の始まりを考える上で最も広く受け入れられている標準的なモデルとなっているのです。